霓裳譚(げいしょうたん)

霓裳譚(げいしょうたん)

 「親を尊敬している」と自 信を持って他人に話す。今の 子供達に、それは可能だろう か。
 ほとんどの親達は、仕事を 持っている。その職種の中で 俗に言う”サラリーマン”が 最も一般的であろう。平日は 朝早くに家を出て、夜遅くに 帰って来る。子と親の接する 時は殊のほか少ないのではな いだろうか。
 日曜など親たちの仕事が休 みの日は休みの日で、彼らは ゆっくりしたいと思う。疲れ ているからだ。
 ところがである。子は、「疲 れているんだな」という様に とることは、まずない。普段 の生活の中で親と接する機会 が少ないから、親のことは、 何も知らない。親の仕事の大 変さがわからないのである。
 その点、自営業などは生活 する場と仕事をする場が同じ であったり、近所であったり ということが多い。親の仕事 を肌で感じとる。辛さや楽し さもわかるであろう。
 特に、自分の力で築き上げ た仕事を持つ親には、誇りや 自信がある。それらの目に見 えない内に秘めたものは、意 外と子の心へ浸透しやすいも のなのかも知れない。
 親を知らない、知る機会の ない子供達は、親へ反発する ことばかりを覚える。先程述 べたように、ただ子に知られ てはいないが、自分の仕事に 何らかの誇りや自信を持つ親 ならば、そんな我が子を一喝 することも可能であろう。だ が、本当にこれがどうしよう もない親だと、子に対してど のように接するべきなのかさ えもわからなくなってしまう。 そんな親を見て、ますます子 は親をどうでも良いと感じる。 悪循環である。
 親を知る機会のないまま大 人になった子は、やはり、子 に対する接し方のわからない 親になるだろう。今、どうし ようもないな、と親に対して 思っている子供は少なくない と思う。そう思われる親たち もまた、どうしようもない親 に育てられたのかも知れない。 遺伝子というものはそんなも のなのかも知れない。
 こうした意見を述べること も、実は今の親と子の関係に はあてはまっていないのでは ないかととても不安だ。
 現在進行形の親と子のある べき姿は、多種多様になって きている。しがし、どんなに 時が変遷しても、「親を尊敬 している」と他人に話すこと のできる子であって欲しい。

(夏吾朗)

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