- 目 次
- 綜合大会終わる
題名のない旅 山本 剛正
思うがままに 小池 義毅
原稿募集
江之島紀行 剛正記
・ ・ ・ ・ 丸山国雄
連載小説「母恋鳥」 高野 勝男
- 綜合大会終わる
- 去る11月8・9日の両日に渡り, 県下高校総合並に個人総合大会が昭和橋を渡って向いの市立高校で行われた。 去年はこの大会には1・2年だけで行って予戦で巻高校
に僅か0.3の差で敗れたと言う試合であるだけに全員去年の名誉回復のファイトに燃
えて行った。しかし今年もいろいろの関係で3年生の丸山信之君が不出場で, これが結
果に大いにたたり今さらながら同君の得点力がいかに大である事を痛感した。 又来年
並びに再来年の我が部を負って立つ本年度1年生諸君はいづれも技量伯仲?結局学校で
選抜テストを行い大室・高橋・石川の3君に決定した。以上の3君と本年度国体選手で
ある高山君, 箱とリングのオーソリティの志田君, それに2年古塩マネジャ以下5名,
この中には不幸にして今春試合の前日足首を折った吉田君が本年度初の大会出場に張切
っている。 ( 以下文中各君の敬称略す) さて, 今回の試合の予想並びに結果をこれ
から書くのだが, 我の予想としては過日の県民大会に最後迄せり合った市高並びにすん
ばた高校を大いにマークし中でもすんばたはあの東野英次郎こと森君を先頭に仲々油断
が出来ないと言う結論に達し, 先ずすんばたを警戒することにしたが見事に返り討ちさ
れ第2位に甘んじた事は返す返すも残念至極おまけに千国などは服の中の金まで失敬さ
れて大いに3リンボウだった。
試合経過は先ず大橋やを出発したのが12時頃試合は1時開始の予定である。 第1
日目はいつもの通り男女予選で2日目に決勝, 会場に着くと新津が背番付けに大童して
いる他 女子数名で, うちが一番早く来たようだった。うちもゼッケンをつけなければ
ならないので早速マネジャー古塩, 新津高校女子生徒から針と糸を借りて来て名マネジ
ャー振を発揮。学年体操を各自行い柔軟も型通りすませ1年生を筆頭にマットを開始し
た。本年度1年生諸君はようやく近頃足駄からクツ位に足先がのびる様になって来た。
高橋は3名中で最も有望で本日の得点が2・3年生を上回るのではないかと予想され
その140の巨体?をマットの上に廻はしている。本年度の徒手の山は側転倒立ネック
跳込み前転と連続しておる所でありそれを十分にしかも確実にやれるのは県下広しと言
えども我が高山茂選手の右に出る者が居ないのである。その証拠として過日の国体に於
いて同君の徒手の成績は県下の第1位であった所から容易に知る事が出来るであろう。
大会の開会宣言があり会長代理の寄居中学校長通称ワンマン氏がその舌の長さが少し変
んな様な話し方で話すは話す実に30分以上に渡り「県は日本の標準日本は世界の標準
故に我が県は世界の標準である」と3段論法でじゃべりまくり居ならぶ各校選手並びに
役員各氏顔を見合せてにが笑い。試合順序は鉄棒・平行棒・徒手・リングでうちが何を
やるにも筆頭だった。これが少し敗因の原因の元であるように思はれた。中でも吉田暢
次選手は初出場にもかゝわらず全部トップのトップで大部上っていたようだった。各種
目に於てベストをつくし得なかったの感がある。
次に2番をうけたまわった千国選手試合前に鉄棒の規定9点を豪語していざつかまった
がよくあれで巴まで頑張ったとその腕力に今さらながら皆んな驚くばかり結果は以下の
表でどうぞ。 徒手では期待の1年生高橋君側転倒立に失敗, やはり前に出場の大室君
が7.7を出して各校の者を驚かした。リング・平行棒は別段これといってニュースに
価いするものがなく, この時すでにすんばたとの差は4点以上。最後の望みの箱に於て
も 僅かではあったがリードを許しここに規定問題に於て 完敗を喫したのである。
さて最後に行われた箱であるが, これに出場の平井選手, 同君も昨春入部以来空転の時
少しヒールの所をいためて以来十分の練習が出来ずこれ又ベストをつくし得なかった。
と言うのは本年度規定の体前屈跳の 試技に於いて名前を呼ばれ挙手一番おもむろにス
タートを開始ジャンプ一番跳んだ瞬間足の筋肉が頭の言う事をきかず閉脚の所を開いて
しまった。 これまでなら今までにも度々見かけるのだが同君「アッ」と言う声と共に
空中で両手を頭の上にあげ頭をおさえたのである。全く反射的に行われたので並み居る
審判も笑いながら採点していた。
次にお伝申し上げるのは 9日の自由に於て 徒手に出た千国選手, 自分の自由の中に
ローリングが入るので用意よろしく320円のサポータをはいてさっそうと出場, 後宙
前方転回まではよかったがローリングに入るやその位置がすこぶる悪く今流行のニュー
ゴールドならぬピュアーゴールドをやってしまった。それで次の連続後転もうまくゆか
ず遂に組んだ自由も忘れると言う事体に直面遂に中途でやめてしまった。 おかげで得
点に大いにひびいたが同君には真にお気毒の様で今後位置の研究をおこたらぬようにお
すすめしてこの大会報告書を終わる。
なお結果は団体では, 新発田についで第2位,個人では高山君の 位, 小坂井君の7位
千国君の10位がそれぞれ決定した。 - 完 -
種目 氏名 | 規定 | 自由 | 総 計 |
| 鉄棒 | 平行 | 箱 | 徒手 | 吊輪 | 鉄棒 | 平行 | 箱 | 徒手 | 吊輪 |
| 吉田暢次 | 5.75 | 7.5 | | 7.7 | 7.3 | 7.0 | 6.8 | | 6.8 | 7.25 | 56.10 |
| 千国直則 | 7.3 | 8.1 | 7.8 | 5.1 | 7.3 | 8.15 | 7.2 | 7.85 | 7.15 | 7.1 | 76.75 |
|
| 小坂井昇 | 7.75 | 7.95 | 8.25 | 8.3 | 7.9 | 7.45 | 7.15 | 8.3 | 7.9 | 8.35 | 79.30 |
| 志田 弘 | | | 8.35 | | 7.95 | | | 8.0 | | 7.75 | 32.25 |
| 高山 茂 | 8.35 | 8.75 | 8.05 | 8.4 | 8.1 | 8.5 | 8.15 | 7.95 | 8.9 | 7.95 | 83.95 |
| 平井 仁 | 7.25 | 6.7 | 3.6 | 8.2 | 7.0 | 4.0 | 7.2 | 7.5 | 7.1 | 7.5 | 65.45 |
| 大室二郎 | | | | 7.7 | | | | | | | |
| 高橋保夫 | | | | 7.55 | | | | | | | |
| 石川 | | | | 7.64 | | | | | | | |
- 題名のない旅
山本 剛正
- 金を費はないで旅行したり, 遊んだりする事に於ては 「小川」という名マネジャーが控えている関係上我々は心強い。どこであゝいう技術を習得したかと不審を抱かせる位の腕前である。とも角, 千葉県は木更津, そこを久留里といった処に, げに怪しき亀山鉱泉とかいう, 水に墨を割った様な湯のある処に案内してくれた。 尤も2日の連休という事を見込んでなるべく人の行かない様な処とて, スケジュールを組んだのだがそこに参じた侍方は, 大塩, 桑原, 小川, それにかくいう剛正の4人切り。大島,チル,渡辺とそれに飛入りを申し込んできてさっと引きあげた高木氏等は不都合にて来れなかった事はかえすがえすも残念。 せめて混浴であれかしと念じたるも,つれ込みのあくのを待っての入浴とあっては,ますますゴキ悪く,盛んに歌をうたい,ガナリ立てる。小川あたりはテーブルの上で逆立ちしたりして,盛んに待遇の悪さに抗議を申し込んでいた。 変った事でもないかと,桑原や大塩あたりは,ヒンピンと風呂を見に行ったが,大した収穫もなかった様子。御体の出る幕もなかった。みんな酒に強くないので,せめて,存氏か,弥彦様でも居てくれたらと,盃を重ねたが,酔はねば悪い様な気がしたが,宿の女中とても全然の不美人揃え,新潟がひとしお恋しくなったものだ。ワヤワヤと1時頃迄サワイでいたが,箱庭の様なスケールの景色と宿では,興の趣くもところとてなく,普通の通りにねてしまった。というのは僕だけの強みであって,あとの3人の氏は----- 以下略。
一泊して, 昼すぎに宿をたったが, 木更津に来て車中にて漸く女らしき女学生を見付けたと思い給え。いつも孤独に泣いていた大塩君は, せめて30分でもと, 涼しいのに暑いとか言って上衣までぬぎ, 張切ったが, テレかくしの煙草がみるみる裡になくなって行く仕末。千葉につくと彼女は降りた。彼も誘はれる様に改札口を出てしまったので止むなく一旦千葉へ降りた。純情そのものの彼は, 彼女がバスの処で, 30分も待っているのに, 近寄る事すら出来ずにいた。あきらめて少し流そうと話し合い, ぶらりと千葉の街に出ても, 思春期の彼は, 自動車にはねとばされ相になったりして, 我々をひやつかせたものだ。
(以下次号)
- 思うがままに
小池 義毅
- 私は今年で生まれて以来丁度20年。
もう 人生の3分の1が 終わってしまった。 全く月日の過ぎるのは早いものだ。「光陰矢の如し」とは月並みの言葉であるが現在の私には, しみじみと感ぜられる。こんなでは30,40は束の間であろう。自分は一軒の借家に住んでおる。ワイフクンが側にいて, その顔はシャンであるか, どうかわからぬ。とにかくいる。そして彼女は一生懸命何かをしておる。ミシンの音が響く。そして, 自分は何かというと畳にねころんで窓枠にはめ込まれた青空にタバコの煙でも浮ばせて, 一日の仕事からの解放をあたかも総べてからの特権のように構えて「おとぎばなし」のような空想を弄んでおる。 子供は----確かに居る。自分の系統は案外多産系であるから, 4,5人以上居るかも知れない。彼等もやっぱり自分と同じような顔をして----自分はまだ自分の顔をみたことがない。みようたって無理なことだし, 鏡にうつったのは信ずることが出来ない。 結局自分の子に自分の姿を見ることが出来るかも知れない。------何をしておるか, 自分にはわからない。そんなお茶漬以下の空想が頭に去来して来る。仕事の際中に, 道を歩く時に, ときどきその空想が飛び出して, 切角の今までの美しい(?) 想像を平凡にしてしまう。こうしてみると自分の想像も案外おちぶれたものだ。毎日の仕事に追はれながら食っては寝, 起きては食う。そして仕事に向っては「人間」を忘れて良かろうが悪かろうが, 機械のように動かされて行く。 まさに狭い意味での25時だ。もう人生がどんなものか, 人間はなんのために生きるのか, なんてことの哲学的( ?) 思索は現実の前に微塵に砕かれて残るものは唯「暮す」ことだけだ。 これでもかっては, 世界大革命を起すことによって, 地上の楽園を作らんとするような溌剌とした空想, スターリン以上の積極的な空想に血を沸かし, バイロン以上の情熱を, 見えない恋人へ星夜, 月夜に身を心を悶えだ。 「生」への力強い希望で毎日が一杯でした。しかし一歩社会に入った途端, 生活に追われ, 生活に疲れ, 完全なお茶漬以下に「生」が沈んで行く。実社会にでて現れる型として第一にまあ毎日を坦々と暮らす型, 第二に金をためようとす型, 第三に「暮す」ことでなく生活をする型, 第四に名誉や位階を望んで実質のない型の四つに分けられると思う。自分は今の所第一の部類に属しておるだろうと一人勝手に考えておる。自然そこに行きついたというのが本当だろう。だからお茶漬のような空想が浮んで来る。 この調子で行くとパチンコと煙草と酒に転がされ, まかれ, 浸されて, あったら人生をつぶしてしまうかも知れない。そしてそのお茶漬の味はさらさらしたものでなく, 渋い, 苦いものであろう。
「世の中は乗合舟の仮住居, よし悪とも名所旧跡」などという言葉に感心してタバコの輪をとばしておるのが現在です。
溢れるばかりの若さをたゞたゞ一途に勉学の道にはげむ--------青春時代は少なくともこうあってよい。溌剌として「生」を楽しみ, 大きな夢を抱いてひたすら総べてに注ぎ込む情熱があって欲しいのだ。またそうあるべき青春時代の健康な姿であろう。坦々とした毎日--------しかしそうなればそれもまた幸福である。それはさらさらしたお茶漬の味。---
- 原稿募集
- 何か面白い事が起ったらハガキに書いて12月25日までに届くようお送り下さい。
宛て先 新潟県南蒲原郡見附町本町五区 千国直則 へ
- 江之島紀行
剛正記
- よくもまあこの様な理想的なスケジュールが組まれたものと, 出掛ける前に感心した事だ。5月の3日続きの休みの真中の日を選んだ処,前の日と後の日が晴れていながらその日は雨気があり,つくづくこの様な不貞な輩との旅は禄なことがないと悟った様な訳。 不貞な輩とは, 筆頭に小川を挙げ, 大島, 大塩, チル, 桑原といったメンバーだから, 一人こちらで気をもんでも, 上手く行かない訳だ。 大塩の誘いの手紙には, やれこの前は雨の降っている時, 渋谷のハチ公の前に小川と一時間半も待たした前科があるに依り, 絶体に時間厳守せよと, きついおどしの文句があり, こちらも気を付けて所定の時間を過ぐる事わずか5,6分にして横浜駅に到着した処, 先に待っている筈の小川見渡せど見あたらない。そのうちに列車が入って来る。するとチル君一人だけ降りて来て告ぐるに, 東京駅から乗る筈の後3人軽く列車に振られて, 次ののに来る筈であると。 その裡に小川がのこのこやって来る。この様にして理想的なスケジュールは先ず第一歩にして側転バック, バランスと始める徒手のバランスに於て床がガタガタと鳴り始めた様に軽く足をふみはずしてしまう。 然し並みいる輩は, いづれも歴戦のさむらいばかり, 狭い8米4角に於てさえも, 大会には適当に組みながら技を競ひ, ラインを越す位でなく, 時間をもオーバする位の度胸連。それを思い浮かべて急にたのもしくなった。とも角6人無事に椅子に座る事が出来,早速桑原君あたりから嫉ける様な写真が披露されたものだ。鎌倉に着き,一先づ漫歩する事になり,八幡宮へ行き鳩に豆など与えた。 大島君あたり一羽物にしようなどと盛んに秘略を用いた様だが,遂に鎌倉の鳩にしてやられた恰好であった。大塔の宮の旧跡を見るとて,一人頭5円づつとられた事は, かえすがえすも残念な事だ。 昼食をしたため大仏を拝みに行く。国宝的なカメラで大仏をバックにいろいろと撮ったものだが果して撮れたものだかどうか。百聞は一見に如かずと金を払って大仏の中へ入ったものだ。流石に5円の価値はあって, スキ物の大塩, 大島君あたり止めるのもきかずに梯子段の裏側に頑張って動こうとはしない。小川君あたりは見事なもので, いち早く発見して注進に及んだ訳。何事かと不審に思い問いたゞすと, 二階にあがったお客が下から見上げられるという事, さても大仏様とて拝んだものだ。といった具合に今度は長 観音に行く事にして、一キロメートルも 行くに山に上って例の百万人願掛けの太鼓がある。 一たたき 円と来ているから豪勢なるものだ。 始めは遠慮しながら一人2・3回づつ搗かせて貰ってたが調子が出て来, 音色のコンクールをやるにつけ7・8回づつは搗かせて貰った。 チル君あたりは道具があれば袈裟がけで行きたい処だがそうは行かず, 記念にと, 腰を据えて将に搗かんとしているのを撮して貰ったりした。 山に上り茶屋で休む事とした。合憎風が強いので残念であったが, 先づ先づの絶景かなという処。据え置きの望遠鏡をかはるがはるのぞいたが風景を見るでなく, 彼らはアベックや女を物色しているのと見たはひがめか。帰り際に茶屋の婆さん上手に事をいう。「今度いらっしゃる時はダブルダブルでね」と来た。トッテツ式の電車に押し込められて次は江ノ島と来た。又も5円の橋賃を出して赴くに, 途中の射的屋や6個の木片を5個の球で落すゲームに, 歩いている足がピタリと止
まり, たて続けに絞られて行く。小生なぞも試みるに女の子などの様に行かず, むざむざと恥をさらしたものだ。 山上にたどりつき, サザエの壺焼の何とうまかった事よ。そしてビールの何と高かった事よ。吾々6人は財布を絞り合っての散財を何したことである。 帰るに及んで, 20円也で帰らねばならぬ御仁が続出した事よ。幸い小川と小生がやっとで正規の切符を買えたものの, 大塩, 大島, チル, 桑原と4人で一人50円以上はかかる道程を各20円づつであげたのには敬服する。これもその道の曲者小川君
の与えし奸智いやはや, この気まぐれ旅の最後を〆切るの見事さであった。
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人生行路のプロローグは 詩をもって始まる
醜悪な世界, 嫉妬の境を絶ち 豊艶なファンタジーの世界へ
足を踏み入れるは 「詩」と呼ぶ橋を通り
吾をして無想, 無欲ならしめるは 詩に越ゆる何があろうか
詩が 人間の糧となり 人間に活力を与え, 無限のエネルギー
底力となる時 俗塵を離れた忘我の境地を求める
吾はそこに 一歩前進した吾を認め
無限の感謝を「詩」と呼ぶ橋に捧げ
明日への新たな希望を胸にかかげて
無限の接吻を「詩」と呼ぶ橋に降らすことができよう
- 連載小説 「母恋鳥」
高野 勝男
- 永い間暗いきゅうくつな牛小屋の中にとぢこもっていたのを突然明るい眼の覚めるよような春の庭につれだされてまぶしそうにしていたが,,もうもうとのるそうな声を家にこだまさして, 田の中を彼と共にはねまわった。きっと子牛も暗闇から開放されてうれしいのだろう。彼も同じだった。越後の永い永い暗黒な冬の中から明るい平和な小天地に飛び出たのはうれしい。小牛を田の中の電柱につないで小屋の中から一枚のむしろを持ってきて田の中にしいた。その中にごろりと上向けにねそべった。 を枕に大の字になった。のどかな暖かい春の正午の陽はあたり一面を照らし彼は青い青い大海原のような空を見あげていた。だがその眼は過去の追憶に破られて涙にうるんできた。空襲でなくなった若い母。広い太平洋上に花と散って永遠に帰らぬ我が父。思い出せば思い出す我悲しいものばかりが彼の若い胸をおそった。 だが夢は春の潮のようにどこ迄もおしよせて来た。東京にいるいとこの明子の事やこの地に来てからほのかに若い思いを寄せている富岡雪子の事らがほのかな春の夢のようにおしよせてきた。
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