ひっ迫する穀物需給-世界の食糧を買い占める国、日本

忘れてはいませんか?農業の大切さ! 

 世界最大の食糧輸入国、日本。「わが国の台所はアメリカ」といっても過言ではないほど、たくさんの食糧をアメリカに依存しています。しかし、その割には国民の食に対する危機感が薄いようです。
 今、アメリカとタリバン政権の争いを全世界が注目しています。もし戦争の影響で、食糧の輸入ルートが途絶えてしまったら。外交関係の悪化で輸出制限を受けたら、あるいは禁止されたら……。ただでさえ、世界の穀物事情は急変しています。毎年、9000万人も世界の人口が増えていること、中国やアジア諸国の経済成長が著しいこと、そして、異常気象が頻発するようになった為、穀物の需要と供給のバランスが崩れているのです。
 みなさんは、毎日の食生活に不安はありませんか。狂牛病を例にとっても、先入観一つで私たちの食卓は様変わりします。これからの食卓を国際視点から検証してみましょう。


◎増える人口、伸び悩む穀物生産量
 買い求めに行った食品が、スーパーになかったらどうしますか。「そんなこと、特売ではよくあること」と、一笑する人もいるかも知れません。それがもし、どこのスーパーにもない状況だとしたら……。これはフィクションでも何でもありません。近い将来に起こり得る事実なのです。
 21世紀を迎えた今、地球上には、およそ60億人もの人がひしめき合って暮らしています。その数はとどまる事を知らず、人口の増加率は年1.6〜1.7%で推移しています。実に、毎年9000〜9500万人もの人口が増え続けているのです。
 一方、世界の農地はここ20数年間では、ほとんど増えていません。80年代中頃まで年3%で増えてきた世界の穀物生産は、急ブレーキがかかり、今では1%の伸びでしかありません。そのため、世界の一人当たりの穀物生産量は、ここ10年ほどの間に12%も減っているのです。
 国際的な立場で日本農業を見た場合、最も注目しなくてはならないのは、日本の農産物自給率が先進国のなかでも異常な低さを示しているという点です(グラフ参照)。わが国の食糧自給率は、昭和40年度から平成11年度の間に供給熱量自給率(カロリーベース計算)は73%から40%に低下しています。これは毎日摂取する食糧で、6割の熱量を外国に頼っていることを意味します。さらに、穀物自給率にいたっては、62%から27%にも落ち込んでいます。
 たとえば、アルプスのふもとのスイスでは、穀類やマメ類、野菜・果実の大半を輸入にたよっていますが、イモ類や牛乳・乳製品については、かなり輸出をしています。それぞれの国が特産物を他国に売り、他国の農産物を買うことによって、国民の食生活を豊かにしていくというのが、農産物の国際貿易の基本なのです。旧西ドイツやイギリスなどの輸入国と比べても、それらの国では次第に自給率を高めているのに対して、日本は何一つ本格的に農産物を輸出することなく、ほとんどの品目を輸入にたよっています。さらには、年々食糧自給率が低下傾向にあるという特異な国なのです。


資料1(世界各国のおもな農産物の自給率と食料自給率の推移)
資料2(主要農産物の総生産量に占める輸出向けの出まわりの割合)

※上記写真は白泉社-ハイジ紀行(文・写真/新井 満・新井紀子)より引用しております。
※ 資料1,2は、「超食糧危機」(第二海援隊) 「【農学基礎セミナー】農業の経営と生活」(社団法人 農村漁村文化協会)より引用しております。



◎トウモロコシがなくなると肉も卵も食べられなくなる
 世界一の飽食を楽しみ、世界中からありとあらゆる食糧を輸入している日本。その国民の多くが、世界的な食糧危機についてほとんど無関心、または無知であるというのは、驚くべきことです。アメリカの穀物在庫が底をつけば、真っ先にパニックに陥る国なのにです。事実、96年には天候不順で、アメリカのトウモロコシ在庫が8月末でわずか13日分しかなくなり、当時のクリントン大統領が、「国家緊急事態宣言」を出すまでになりました。その年にとれたものが、本格的に流通するのが10月ですから、最低でも60日分以上ないと危険で、輸出禁止もあり得たのです。しかし、その事実さえを知らない日本人が多いのです。幸いなことに、その後の恵みの雨で、食糧パニックは避けられましたが、決して楽観はできません。
 ここ数年、穀物の価格が急騰しています。特に問題になっているのが、トウモロコシや大豆、小麦といった世界の三大穀物です。「トウモロコシはあまり食べないから心配いらない」という人もいるかも知れませんが、それは大きな間違いです。トウモロコシのほとんどが、牛や豚、ニワトリ、またはハマチやタイなどの養殖魚の餌となり、そのおかげで私たちは肉、魚、卵を食べることができるのです。トウモロコシの世界貿易量の70%強をアメリカが占めており、日本は99%をアメリカから輸入しています。また、日本で作られているトウモロコシのほとんどが、アメリカから種を輸入しています。
 さらに、近年は中国をはじめとしたアジア諸国の経済成長も見逃せません。豊かさが生まれ、肉の消費が増えてきています。肉の需要が多くなれば、それだけ牛や豚の飼料となるトウモロコシの需要も高くなります。
 国際的に流通する農産物は、数が非常に限定されていて、必要な時にお金を払えばいつでも好きなだけ買えるものではありません。輸出用として、市場に出回る穀類やマメ類は、世界の総生産量のうち数%から二五%程度にすぎません。そのほとんどが、自国内での供給・消費が目的であり、他国に売るために生産されているものではないのです。ですから、異常気象や社会経済的な変動が発生すると、いくらお金を出しても手に入らなくなるという事態は避けられません。
 また、発展途上国では、人口増加に対応して食糧の増産に努めていますが、決して順調ではなく、やむなく乏しい外貨を使って各種の農産物を輸入しています。このような国際的な背景を考えると、輸入した方が安上がりという理由だけで、わが国の食糧生産能力(米で例えると、潜在作付け面積は280万ヘクタールと見積られているが、今年は青刈りした面積を含め171万ヘクタールしか作付けられていない)を発揮させないというのは、国際的にも望ましいことではありません。


◎異常気象が食糧パニックを巻き起こす?
 先進国の農業は、技術革新の成果によって生産を伸ばしました。しかし、国内の人口は緩やかにしか増えなかったので、結果的に過剰となった農産物を大量に輸出する国が出てきました。これに対して途上国の農業は、生産資材の供給も思うようにすすまず、生産が順調に伸びない反面、急激に人口が増えたので、慢性的な食糧不足に陥る状況が生まれました。
 穀物をはじめ、輸入する食糧のほとんどをアメリカに依存している日本。さらには、先進国の食糧の輸出にたよざるを得ない途上国。そんな状況下で大きな異常気象が発生し、干ばつがやってくると、食糧輸出国さえ自国民の食糧確保を優先せざるを得ません。全面的に輸出禁止となれば、日本は手の施しようがなく食糧輸入国が一変し、飢餓に悩まされることになります。それは、決して遠い未来の話ではありません。昨今は、人口爆発により、地球環境は悪化する一方で、異常気象が頻発しているのです。わが国でも、平成五年には米の不作で、米屋から米が消えた事実をお忘れではないでしょう。
 今日のような国際化の時代には、自国の農業のことは自国の中で考えればすむという状況ではありません。日本の農業は絶えず海外の影響のもとにおかれています。また、日本の農業の在り方が海外の農業に大きな影響を与えています。
 私たちは地球の市民としての観点を身につけながら、日本の農業の発展と食糧問題を考える視点に立たねばなりません。以前、公共広告機構のCMに「輸入してまで食べ残す、不思議な国ニッポン」というのがありました。まずは、食べ残しを反省し、食事の量に気をつけることから始める必要があるのかも知れません。

最近は、農業体験の催しが増えています。ぜひ、農業と食糧の大切さを子供たちに教えてあげてください!


参考文献 「超食糧危機」(第二海援隊)「【農学基礎セミナー】農業の経営と生活」(社団法人 農村漁村文化協会)


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